退任あいさつ

先日(2021626日)の総会で、ご承認いただきましたとおり、2021630日付をもって退任し、理事及び理事長から退くことになりました。200211月にこの団体が立ち上がってから7000日近くになります。今までにも、交代する節目はあったと思うのですが、なかなか、その機会に至りませんでした。このたび、本職の定年3年前を括りとすることにいたしました。 
もとは、私は、少年院の教官として働いており、2年間か3年間で役職を入れ替える職場にいました。新しく少年院を立ち上げるときであっても在任期間は同じです。人が入れ替わることで、誰がやってもできる組織が育つのです。しかしながら、これまでの間、私は、青少年就労支援ネットワーク静岡をそのように育てることができませんでした。このことを、心から、大変申し訳なく思っております。
自発的組織であるボランティア団体では、公務員の人事異動のように人を当てることはできず、役職を担うのも、一人一人の自発的意思によります。そのことが交代を難しくさせていたというのも、私の退任が遅くなった一つの理由ではあります。今回の交代に伴っては、多くの方々にためらいなく新たな役職を引き受けていただくことができ、私たちの中に、この団体を支えるという決意と自発性が育っていることを実感することができました。 
お話ししましたように、私は公務員であり、自分のことを、その仕事から私的利益を得ることのない無償の奉仕者であり、また、自らの職場を、社会の公器(おおやけのうつわ)であると思っていました。
この青少年就労支援ネットワーク静岡は、ボランティア団体として無償の奉仕者から成り立っている団体ですが、この団体もまた、市民社会を組織化した、社会の公器であると思います。
このように考えると、私たちが私たちに問うべき二つの問いは、私たちは、社会を代表しているのだろうかという問いと、そして、社会に役立っているのだろうかという問いだと思います。
一つ目の問いへの答えは、私たちがあくまでボランティア団体にこだわり続けるということです。あらゆる仕事、あらゆる生き方をしている市民から構成されてこそ、この団体は社会を代表しているのだと思います。
二つ目の問いへの答えは、私たちが基本どおり、本人中心に地域を歩き回る就労支援を行い、かつ、その就労支援の力が発揮できるような、誰もがつながっているような地域づくりをするということだと思います。 
静岡方式と言いますが、その本質をたった一言でいえば、試行錯誤だと思います。まずやってみる、うまくいかなかったら別の方法を試してみる、手を変え品を変え前に進む。
これは、就労支援のプロセスであり、この団体の成長のプロセスでもあります。仲間が足らなければ仲間を増やす、地域ごとに工夫して取り組み刺激しあう、あらたな困りごとがあればそれを解こうとして助けあう、 大事なのは、この試行錯誤の繰り返しです。
なぜ、試行錯誤をやり続けられるのか。なんやかやあっても、結局はうまくいく、あるいは、うまくいかせることができるという強い楽観主義をもっているからです。うまくいかないという途中経過はあっても、不可能はないと信じているわけです。
これからも、誰もが働ける喜びを感じる静岡を創るという目標を掲げて、徹底して試行錯誤をしていきましょう。 
その試行錯誤の一つとして、今回、私が提案させていただいたのは、東部・中部・西部で代表を出し合い、共同代表制の団体とするということです。私は、この団体の活動を通じて、団体が民主的であるためにはそれに合った仕組みが必要で、かつ、意思決定にあたっては合議が重要であると感じるようになりました。それゆえに考えたのがこの仕組みです。この新しい仕組みが、新たな試行錯誤の手始めとなり、成り立っていくことを期待しています。 
私自身、ここで20年間もまとめ役を経験させていただきましたが、多くの方の知恵を集める係だったと思います。様々な判断にあたり、たくさんの知恵をいただき、学ぶことばかりでした。 
 
 これからも、この団体が市民の知恵を結集することで、前向きの試行錯誤を繰り返し、たくさんの失敗を通じて、泥臭く、地域を這いまわりながら成長していくことを心から期待しております。
 
今まで、本当にありがとうございました。

 

                                 津富 宏